ナミダ【蘭拓】
今、アイツは何をしているんだろう。
地球と宇宙じゃ、週に1回、10分程度の会話すらできない。
毎週アイツが変わっていく。アイツらが仲良くなっていく。
それを考えると、本当は許せない。でもアイツももう少しで帰ってくる、笑顔で迎えなくちゃいけない。雷門の仮キャプテンとして。
たとえあいつがついてきても、アイツが悲しむのなら、無理に引き離さない。
俺とアイツの距離を保ちつつ、あいつと少しずつ別れさせる…そうしよう。
アイツの悲しむ顔が見たくないら。もう、アイツの苦しむ顔なんて、悲しむ顔なんて、見たくない、見たくないから。
小さい頃、俺は大人の汚いところを見て育った。アイツもそうだった
毎日アイツの泣く顔を見てきた。悲しむ顔、苦しむ顔も。
アイツは俺の前で泣いていた。俺は…?
俺は今まで、涙を流した事がある?
…いや。少なくとも、俺の記憶では、ない。
俺は、アイツの涙を見るたびに、自分が強くならなくちゃ、自分が泣いてちゃアイツを慰めれない、そう思ってきた。
でも、それが、もしそれが、俺を苦しめていたとしたら…?
アイツが他人に笑顔を見せ始めたころ、俺は笑顔を見せ始めなくなった。
その、溜まった涙が、俺を縛っていた…?
涙は、流さないといけない…?
涙が、涙が、俺の溜まった涙が…
溢れ出てきた。止まらない。止まらないー…
涙が出てきて何時間経っただろう。もう出てこない、そんな気がする。
涙で、床に水たまりができた。
この涙…誰にも見られていない…。きっと、今学校に行っても、誰も普段と変わらない様子で接してくるだろう。ここにアイツがいたら…?
アイツが…アイツがいれば、俺の苦しみも少しは軽くなった…?
…そんな、ことはない。
俺が泣くと、アイツも泣く…泣く…泣…く…
ヤバい、涙が、また、溢れてきた…これが…泣く…と、いうこと?
でもアイツは静かに泣く。俺は、泣いている…?否…哭いている。
また、涙が止まらない…
止まれ…止まれ…と…
「う゛わぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
とうとう声を出してしまった…
出た声は止まらない。絶えず、哭きつづけるーーー…